◇リラ・メディテーションのすすめ <2005.03.04 第16号>

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□ ホロ苦い体験-「蒲田行進曲」(その2)

 

 自分なりにイメージを持ち、京都・太秦へと旅立った私でしたが、ここで大

切なことを忘れていたのでした。撮影所の雰囲気やその役者さんの演技の特徴

などは事前に把握できていましたが、ひとつの職業である“付き人”のイメー

ジができていなかったのです。

 

 蒲田行進曲もスターを取り巻く大部屋さんの話であって、付き人の話ではあ

りませんでした。具体的に住み込みの付き人の生活パターンというやつが見え

ていなかったのです。

 

 私がイメージしていたのは、その有名俳優のまわりで、小さな役を演じてい

る役者の私でした。決して付き人の私ではなかったのです。

 

 実際の付き人の仕事とは、こんな感じでした。朝は六時前には起きて、庭の

掃除と犬の散歩です。犬といっても猟犬が三匹いました。どちらかというと小

さい頃から私は犬が苦手でしたが、気合いでなつかせました。

 

 山の中を駆け回ってから家に戻り、錦鯉に餌をあげて、それから朝食です。

住み込みのお手伝いさんと奥様(有名女優)が作ります。

 

 皆が食べ終わると、その次は子供たちを幼稚園へ車で送って行きます。正に

山の上の邸宅でしたから、里へ下りていくといった感じでした。

 

 子供たちを送り届け、家に戻ると次は旦那様(有名役者)の出発の準備です。

準備ができると車を回し太秦の撮影所へ向かいます。そこは、まさに現場です。

テレビや映画で見る顔がウジャウジャいます。

 

 「すご〜い」などと感激している間はありません。楽屋の掃除からはじまっ

て、昼食の仕出しの注文、旦那様がトイレにいけば、扉の前でタオルを持って

出てくるのを待ちます。

 

 金のロレックスを受け取り、撮影の間ウエストバックの中に保管します。さ

あ撮影です。床山、衣装、メークの準備を手伝い、カットの合間に手鏡を持ち

衣装やメークの乱れを直します。

 

 全て終わると、帰り支度です。旦那様が風呂に入ってメークや刺青をおとし

ている間に準備をします。楽屋に来客があればお茶やお菓子でもてなします。

ブランデーをお出しする時もあります。

 

 芸能人は、ここで真っ直ぐには自宅へ帰りません。取り巻きの仲間を引き連

れ飲みにくりだします。お開きが近づくと、サッサっと会計を済ませ車を回し

ます。自宅に戻り、奥様に旦那様を引き渡し、荷物をおろし車を車庫へ入れま

す。

 

 他に用がないかを確認し、就寝の挨拶を家族全員にして、離れの自室に戻り

ます。それからお風呂をいただき、洗濯をしてから床につきます。

 

 「あー、疲れた〜!」と思っているところへ、お手伝いさんから「すみませ

ん、これ運んでくれませんか」とか頼まれちゃったりするのです。そんなこん

なの毎日でした。

 

 こんなこと、やってみなくては分からないことばかりでした。ニューヨーク

から調子に乗って帰ってきた私は、“役者”として京都へ行ってしまいました。

全く違う職業として“付き人”というものを見ることができなかったのですか

ら、この仕事が面白いわけはありません。

 

 若かったですから、東京に置いてきた彼女のことも気になりました。こうし

て、目的意識が次第にぐらついてきてしまったのです。結果として東京へ帰っ

て来てしまいました。挫折でした。完敗です。

 

 

 小説でもよく書けたものは、物語に矛盾点がなく、つじつまが合っているも

のです。「想う」も同じです。具体的にイメージをひろげ、心に描かれた内容

のつじつまが合っていて話に一本の筋のようなものが通っていれば、それだけ

自分を突き動かす力が大きくなるのです。

 

 それを怠ると違う方向へ迷い込んでしまいます。しかし、失敗を恐れてはい

けません。また元の道に戻り、やり直しは何度でもできるのですから。

 

 道草をした分、そこで色々な経験を積んだのですから、人間としてはひとつ

学んだことにもなるのです。

 

 今、自分が本当にしたいことを胸に手を当てて正直に問いかけてみること。

内観法の項でも書きましたが、これが全ての根本であり、出発点であることを

忘れてはなりません。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

relamedi@infoseek.jp